グローバル経済
2008年07月05日
アフリカ 苦悩する大陸
アフリカ苦悩する大陸
著者のアフリカを見る目は優しいと思うし、公平な視点だと思う。先週の日経の書評は、評者の意見のほうが偏っているように思えた。
アフリカがなぜアジアのように発展できないのかを、イギリスのエコノミスト誌のアフリカ駐在特派員だった著者が取材や自身の生活経験を元に、様々な角度から検討、分析している。
エリートによる独裁制、内戦、ダイヤや鉱山、石油などの「資源の呪縛」。エイズの猛威。そして部族主義、派閥主義、人種主義を統治の手段として使っていることなど。とはいえ、いくつかの国は、これらの問題を何通りかのやり方で解決しており、そこに著者は希望を見いだしている。
どのように援助し、どのように貿易をすればアフリカの諸国は発展できるのか、アフリカの各国の政府はどうすれば良いのか。政府の政策の善し悪しが、発展するかしないかを決めていると言っても過言ではない。
最近、資源高の流れに乗って、アフリカを対象にした投資信託も登場し始めたが、中身は南アフリカの株式が中心であった。アフリカの希望の星は南アフリカと言うことなのだろうが、次に続く国はどこになるのだろうか。
少々古い話になるが、自衛隊のルワンダ難民救援派遣に関する本を以前に読んでいたので、本書が語るアフリカの状況は理解しやすかった。
不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈上〉1989~1996 (新潮文庫)
2008年06月22日
偽善エコロジー
偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書 (た-5-1))
環境に良いとされている活動、行動が実は意味が無いものも多いということを率直に説明している本。環境ビジネスに踊らされているという現状に警鐘を鳴らしている。
取り上げられているのは、エコな暮らしに関しては、レジ袋、割り箸、ペットボトル、ハウス野菜・養殖魚、バイオエタノール、CO2削減、冷房28度など。
また環境に関する危険、安全の勘違い、様々なリサイクルに関する善し悪しなども取り上げられている。
著者の着眼点は優れていると思うし、内容も良いのだが、唯一、義憤、公憤に基づく、マスコミと役人や企業に対する十把一絡げの弾劾が、読んでいて興趣を削ぐ感がある。本文中に何回も書くよりも、むしろそれだけできちんと一章を設けて、丁寧に意見を書く方が読みやすいのではないだろうか。そうでないと本文中のデータに基づく分析結果でさえも、事実なのか意見なのか、読む側に混乱や勘違いを招くのではないかと思う。
とはいえ、環境問題を考えみたい人には必読の書と思う。
続きを読む2008年05月17日
サブプライムの実相 詐欺と略奪のメカニズム
サブプライム問題は、構造的な問題だったということがよく理解できる1冊。サブプライムの顧客層に対する詐欺的な貸付がなぜ起こったのか、なぜこれだけ拡大したのかが、その経済的なメカニズムとともに詳しく説明されている。とくに連邦政府、FRBの不作為に対して舌鋒は厳しい。
結局のところ本書で語られているつぎの言葉(P.191)に集約されると思う。
「悲劇は、ローンとは貸したものが返済を受けて、償還されるまで責任をもって、借り手の信用を監視するというモデルを実務慣行とする石器時代の法制度のまま、モーゲージやローンが善意無過失の投資家の間をを流通する時代になってしまったことだ。実体法は、そもそもローンなどが売買により譲渡され、しかも仲介者を通じて、証券化され、それほど容易に転売され、2次流通し、ましてや3次市場までできることなど想定していない。」
中略
「この市場のメカニズムは、想定外の詐欺がおこったとき、重大な欠陥を露呈する。しかし現実は、想定どおりにはいかない。不正は制度的温床があるから、同時代的に一斉に発生し、まるで伝染病のように広がり、3次市場ではもはや回収し治癒することが不能な状況におちいる。」
サブプライム貸付とその証券化という仕組みに重大な欠陥があり、一部の者はそれを利用し、一部の者は気がついていたがそのことを気にせず、大多数の者はそのことに気づいていなかった、ということだろうか。
本書の内容はとても詳細で、これだけでサブプライム問題の本質を語り尽くしていると思う。一方で、急いで出版されたためか、単純なワープロ誤変換、タイプミスなどの誤字、脱字、章の構成の見直しによるためなのか、同じ文章が複数箇所で出てきたり、3文字略語が説明なしで多用されて後から定義されているようなところなどが散見された。編集、校正が不十分な印象である。
このためいきなり本書を読んでも理解が難しいとも思う。私は下記の本を読んでいたので、本書も理解しやすかった。
サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 (宝島社新書 254) (宝島社新書 254)
こちらは、状況を把握するというためには、短時間で理解できる良書だと思う。
2008年05月04日
波乱の時代(下) −世界と経済のゆくえ−
下巻の内容は、資本主義の擁護者の面目躍如である。アメリカ経済の守護神、バリバリの保守主義者という印象を受けた。
経済成長と資本主義の関係からはじまり、各国の今後の経済成長の見通し。特に中国、ロシア、インドの見通しと中南米のポピュリズムを取り上げている。いわゆるBRICsである。
米国の経常収支と巨大な債務については、それほど問題ないと言っている印象だった。
グローバリゼーションと規制、インフレ対策なども語られている。教育と所得格差の章では、米国の初等・中等教育の問題点が挙げられている。
高齢化社会、コーポレート・ガバナンス、エネルギー問題についても取り上げられ、そして最後には未来予測まで書かれている。盛りだくさんであり、経済学の教科書になりそうな内容である。フラット化する社会のFRB版という感じ。
ただどうしても、FRB議長という上からのマクロの視点が中心であることから、何かしらの見落としや穴もありそうな印象も受けた(サブプライム問題もその一つなのだろう)。行動心理学的な観点が少ないのではないだろうか。見えざる手を信頼しすぎているかのような気もした。
とはいえ、すばらしい本であることは確かである。
2008年04月25日
日常の疑問を経済学で考える
なぜ、冷凍室にライトはついていないのか、牛乳パックが四角なのはなぜか、DVDとCDはなぜパッケージの大きさが違うのか、バーで水は有料でピーナッツが無料なのはなぜか、女性モデルが男性モデルより稼ぐのはなぜか、ホテルのミニバーはなぜ高価なのか、ビデオデッキに普通の人が使わない機能がたくさんついているのはなぜか、レストランでドリンクが無料なのはなぜか。
いろいろな日常のコストなどに関する不思議について、説明してくれる本である。大学の経済学の先生が、学生たちに考えさせたレポートからいろいろとヒントを得て書いた本らしい。アメリカの事例が多いため、ちょっとわかりにくいものもあるが、多くの疑問について納得できる理由が説明されていて面白い。
似たテーマの本としては、この本もおもしろかった。
両方併せて読むと、生活力がアップするかもしれない。
2008年04月09日
貧困大国アメリカ
ビジネスに役立つ本 - livedoor Blog 共通テーマ
新聞を読むと、サブプライム問題では、銀行などの金融機関の経営の話ばかりが語られているが、サブプライムローンで支払いができなくなり家を追い出されたアメリカの人々はどのような状況なのか、あまり伝えられていない。
本書のエピローグではサブプライムで住宅を得て、そして失った人々の話からスタートする。フードスタンプという貧困層向けの福祉政策が、高カロリー食品ばかりを食べる貧困層を生み出しているということも語られる。2005年にアメリカ国内で飢餓状態を経験した人口はなんと3150万人にものぼるという。
災害対策の民営化がニューオリンズの洪水の悲劇を生み、学校のチャータースクールという民営化が学校間の格差を拡大していく。高い医療保険料と医療費によって、中流階級でも、入院をすると貧困層に転落してしまうという恐ろしい実態も描き出されている。
このような状況の中で、大学進学の援助と引き替えに、軍隊に入る若者も増えているとのこと。無事に帰国できれば良いが、在郷軍人病院への国の補助が減っているため、負傷して帰国すると十分な治療が受けられないという話もあった。
大学生が学費のローンで苦労している話や、仕事がなく家族を養うために危険なイラクでトラックの運転手をした人の話など、現代アメリカのひどい状況が描き出されている。
アメリカはどうなってしまったのだろうか。これからどうなってくのだろうか。
そして日本はどうなるのだろうか。
2008年03月01日
2008年02月28日
アラビアのバフェット
アラビアのバフェット“世界第5位の富豪”アルワリード王子の投資手法 [ウィザードブック125](DVD付) (ウィザードブックシリーズ 125)
サウジアラビアの王子にして、世界的な事業家で億万長者であるアルワリード王子の評伝である。公認の本ということで、長期にわたる密着取材の成果として、そのハードワーカーぶり、多忙さ、億万長者のお金の使い方と投資の感覚などが書かれている。また、人間としての奥の深さ、家族や取り巻きに対する情愛、慈善活動家、進歩的な民主主義者としての一面も描き出されている。
億万長者がなぜビジネスジェットをもっているのか、どのように使うのかなども良くわかった。
時間を大切にすること、厳密にスケジュールをたて計画的に行動すること、日常でもしっかりと勉強し、考える時間を取ることなど、自己節制ぶりもすごいと思った。
DVDもドキュメンタリー風で良くできている。
600ページの大部であるが、先入観を持たずに楽しく読める一冊である。
2007年12月24日
スティグリッツ教授の経済教室
スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く
グローバル経済への警鐘を鳴らしている元世界銀行上級副総裁のエッセイ集。専門誌に毎月寄稿していたものを2003年から2007年までまとめたものがこの本である。イラク侵攻への批判から、先進国と開発途上国の貿易交渉への提言、そしてサブプライム問題の発生の危険性の予告まで。高い視野からバランスよく、世界経済のありかたを説明してくれている。ブッシュ政権のちょうど対極のスタンスをとる良識派とでもいえるだろうか。
著者の作品では、この本のほうが読みやすかった。
また、アメリカの綿花農家が、なぜ世界最強なのかについては、この本がとてもわかりやすい。
あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実
2007年07月15日
クリエイティブ・クラスの世紀
クリエイティブ・クラスとは、アーティスト、クリエイターだけでなく、知的職業に就く人たち、学者、技術者、起業家、医師、弁護士、デザイナー、経営者などと定義されている。これらの人たちが多い都市ほど、発展し経済成長していく。これからの時代はクリエイティブ・クラスの多寡がその都市の未来を定めるということである。
本書は著者のクリエイティブ・クラスに関する2冊目の著書ということで、クリエイティブ・クラスの都市の成長に対する影響よりも、米国のクリエイティブ・クラス確保に対する危機感、警鐘に重きが置かれている。邦訳は本書が1冊目のため、クリエイティブ・クラス自体の特徴の説明が少ないままに、論が展開されていってしまうところが、少々わかりにくい感がある。
世の中がクリエイティブ・クラスとその人たちにサービスを提供するサービス・クラス(飲食店員、販売員、家政婦...)という階層に二極化しつつあるという説明もあり、格差社会の新しい視点を提供している。また、アメリカがこれまで各国から留学生という形で最高の頭脳を集めていたが、近年はカナダ、オーストラリア、北欧諸国などに米国の学生自身が流出しているという話も、少し驚きを感じた。米国が9.11以降、外国人に対する寛容性を失った結果らしい。
ハーバード・ビジネス・レビュー 2007年5月号はタイトルがクリエイティブ資本主義となっている。この号のほうがクリエイティブ・クラスについてコンパクトにまとまっていてわかりやすい気がする。
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2007年 05月号 [雑誌]






























