2008年06月
2008年06月30日
インデックスファンドとヘッジファンドの話
米国はどこで道を誤ったか―資本主義の魂を取り戻すための戦い
ヘッジファンドの真実 (新書y 185)
最近、投資関係の本を2冊平行して読んだ。「米国はどこで道を誤ったか」は、インデックスファンドの雄、世界最大のミューチャルファンドであるバンガード・グループを立ち上げたジョン・C・ボーグルが書いた本である。内容は現代の米国の資本主義がゆがんでしまっていることに対する痛烈な批判である。
第1部株式会社アメリカでは、オーナー資本主義が軽んじられ、マネージャー資本主義になっていることが取り上げられている。プロスポーツ選手とスター経営者の違いは、プロスポーツ選手は他社から報酬を得るが、スター経営者は自社から報酬を得る。このためスター経営者の報酬が増えるほど、株主の利益を削ることになるということが述べられている。
第2部投資社会アメリカでは、投資機関が企業の株主となったことで、株主として経営者を十分に監視・監督していないことが取り上げられている。とくに、金融機関が投資機関を兼ねることで、企業は監視相手でありかつ顧客であることから、金融機関に利益相反が生じていることが問題とされている。
第3部ミューチャルファンド・アメリカでは、投資信託が株主の財産を殖やすことではなく、マーケティングにかたよってしまっていること、またファンドマネージャーが絶大な権限を握りその監視が不十分であることが述べられている。ファンドマネージャーが利益を取った後に、投資家に残りの利益が配分されているという現状が書かれている。
アクティブファンドは成功すればするほど、資金が流れ込むことで、だんだん市場全体を買うようになってしまい、結果としてインデックスファンドのようになってしまうという話は、とてもわかりやすかった。
「ヘッジファンドの真実」は、日本のヘッジファンドマネージャーが、ヘッジファンド業界とヘッジファンドの立ち上げ、戦略、運用などの舞台裏を具体的に語っている本である。ヘッジファンドというのは小さな所帯で運営されており、ファンドマネージャーやメンバーの個人的な資質に負うところが大きいということが語られている。
今40代の著者が5年後はともかく、10年後、20年後も今と同じようなエネルギーでファンドマネージャーという仕事をできるかどうかはわからないという、率直な説明はなるほどと思った。長期投資で10年、20年と保有したとしても、運用を担当するマネージャーも年を取り、変わっていくということを忘れてはいけないと思う。
投資信託やヘッジファンドの表と裏を見ることができる2冊だった。
2008年06月22日
超巨大旅客機エアバス380
超巨大旅客機エアバス380 (平凡社新書 413)
ぜひ乗ってみたい飛行機である。総2階建て飛行機で、座席や機内設備もゆったりしていて、そして静か。夢の飛行機の登場である。ボーイングのジャンボジェット機も大きいが、それよりもさらに大きい。そして、現代の最新テクノロジーが詰まっている。
本書は、A380の開発のストーリー、性能の特徴、導入を予定しているエアラインなどを紹介している。また、人類が巨大旅客機にチャレンジしてきた歴史なども書かれており、夢の飛行機登場という意義がよくわかるようになっている。
成田にはシンガポール航空がA380を毎日就航させている。まずはシンガポール航空のホームページでA380の紹介を楽しむのも良いのでは。
偽善エコロジー
偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書 (た-5-1))
環境に良いとされている活動、行動が実は意味が無いものも多いということを率直に説明している本。環境ビジネスに踊らされているという現状に警鐘を鳴らしている。
取り上げられているのは、エコな暮らしに関しては、レジ袋、割り箸、ペットボトル、ハウス野菜・養殖魚、バイオエタノール、CO2削減、冷房28度など。
また環境に関する危険、安全の勘違い、様々なリサイクルに関する善し悪しなども取り上げられている。
著者の着眼点は優れていると思うし、内容も良いのだが、唯一、義憤、公憤に基づく、マスコミと役人や企業に対する十把一絡げの弾劾が、読んでいて興趣を削ぐ感がある。本文中に何回も書くよりも、むしろそれだけできちんと一章を設けて、丁寧に意見を書く方が読みやすいのではないだろうか。そうでないと本文中のデータに基づく分析結果でさえも、事実なのか意見なのか、読む側に混乱や勘違いを招くのではないかと思う。
とはいえ、環境問題を考えみたい人には必読の書と思う。
続きを読む2008年06月15日
経済は感情で動く
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
経済の理論は合理的な判断をする人間を想定しており、それが前提で組み立てられている。ところが、実際には人々は感情に従って行動をするため、非合理な行動となり、実際の経済は理論通りにいかない。特に損をすることを避けたがる、大きな金額になると細かな損得に無頓着になる、そして負けがこんでくると一発逆転をねらって、大きなリスクを取ろうとする、ということらしい。そして自分自身がそういう行動をしやすいということを知らないことが一番のリスクとなっている。
本書は、我々がいかに感情に頼って判断しているかを、実験例や心理テストを通して教えてくれる。そして、このような行動は脳の古い皮質と新しい皮質の役割分担によって起きているということが説明されている。最近のfMRIを使った研究で、合理的行動と非合理な行動の時の脳の働き場所なども明らかになってきているらしい。
つい非合理な投資行動をしてしまう理由がわかる本である。
2008年06月10日
音楽遍歴
音楽遍歴 (日経プレミアシリーズ 1) (日経プレミアシリーズ (001))
小泉元首相の自伝はまだ書かれていないが、本書は、クラシックやオペラ、プレスリーなど音楽分野の好みに関する自伝のような本である。小泉元首相の語り口そのままの文章であるため、文章でも特徴が出るのだなと最初は思ったが、元首相へのインタビューをして書かれた本とのことである。断定的な話し言葉が多いのはこのためか。だが、元首相の雰囲気が良く出ていると思う。
素人の趣味とは言いながら、幅広くクラシックを聴いてきた嗜好の変化などが詳しく書かれている。クラシックやオペラに興味の無い人でも、本書を読むと、自分も聴いてみようかと思うかもしれない。
音楽の楽しみ方を知らせてくれる本である。
2008年06月03日
イラク戦費3兆ドルの衝撃
世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃
得をする戦争はないこと、国として、社会としては戦争は大きな損であるということが良くわかる本。(ただし一部の者は得をしているのだろうが。)
イラク戦争のアメリカの戦費は当初の予想、予定を大幅に超えて増大しており、いまだに増え続けている。また戦争に投入された資金は再生産や経済の循環にはつながらないため、経済成長の機会損失につながっている。そして、兵員を大量に投入していることで国内の労働生産力の不足、戦死・負傷によって生産人口にもどれないこと、また、負傷によって傷害を負った元兵士を一生、国が養っていくことによる財政負担などが挙げられている。これらはトータルで3兆ドルに上るという。
一方で国民の一人一人の観点からは、戦死、戦傷によって人生を棒に振った若者、その影響を受ける家族などの犠牲のコストも計算されている。また、国土を戦場にされたイラク国民の被害もコストとして定量化されている。
イラク戦争勃発による国際情勢の不安定化とそれに伴う原油の値上がりによる、日本のコストは3070億ドルと試算されている。
これらはすべて、無計画で予算の見通しもないまま戦争に突入した現ブッシュ政権が引き起こしたともいえる。また、それを制止できなかった議会の問題でもある。そして世界は大迷惑を受けたといえる。
アメリカはイラクから撤兵できない限り、さらに戦費は膨らんでいく。また戦費は増税ではなく国債の発行でまかなわれてきた(諸外国が買ってきた)ことから、未来の負債をどうするのか、この点も、今後、大きな課題になるであろう。次期大統領に負わされる責務は大きいと思う。























